宮木康隆のエッセイ集

tomo essay

07 ドイツ人


もうドイツへ行くようになってから、15年はたったと思う。そんなにドイツへ行ったのに、ドイツ語が話せないし解からない。
ただダンスに使うほんの少しのドイツ語の単語を覚えたぐらいだ。
でも15年間、毎年2回ぐらい行くと、私でもドイツのことが少しわかってくるものである。
そして最近やっとドイツ語の辞書が引けるようになって成長したものだと思っている。


いつもフランクフルト空港には夕方に着く、そこから目的地に向かうと近いとこでも夜8時ごろになる。
前日どんなに遅く着いても、深夜にやっとホテルに着いても、時差のせいか朝早く、外が暗いうちに目が覚める。
ほとんどのホテルは、朝食は7時から食堂でバイキング形式に始まる。私は朝1番で食堂へ行き、朝食をとることが日課の様になる。
広い食堂に一人で朝食をとっていると、見知らぬドイツ人が食堂に入るなり『モァゲン』と声をかけてくる。
どこのホテルに行っても、毎朝食堂に入ってくるドイツ人は同じように、声をかけてくる。
ドイツ人はなんて友好的な国民だと感心して、こちらも小声で挨拶を返すのである。


日本に帰る日はお昼のパンをパン屋で買う。パン屋の前でたくさんある種類のパンから、
どのパンを買おうか迷って、ショウウインドウ越しにパンを選択する。
私は、ケシの実とかひまわりの種とかが付いているパンが好きなので、それを欲しいのだが、
パンの名前すらわからず、買う時は指で指すしかない。
朝の駅では、ドイツ人がパン屋に群がっていて、一向に店員が私のところへ来てくれない。
いつも買う時はドイツ人の3倍は順番を待っていると思う。
ドイツ人の店員はなんて意地悪な人がやっているのだろう。
とドイツに行くたび思うのである。だから、誰かいれば人に買ってもらうことにしている。
デパートなどに入ると、店員は誰も声を掛けてこない。自由に物色して気に入ったものがあれば、
会計のところへ持って行けば買えるのである。
『メイ アイ ヘルプ ユウ』という意味の言葉なんて声をかけてこないのである。
ドイツ人の店員はとても態度が大人である。私は今までに追跡販売はされた経験がない。


こんなドイツ人をいったいどう解釈すればいいのか、
長年かかってやっと解かってきた。もしかすると解らなかったのは私だけだったのかもしれないが。

それは、ドイツでは、お客と店員の関係が日本とは異なっているということだと思う。
日本では、どこの店に入っても、店員が『いらっしゃいませ』と必ず言ってくる。そしてお客は黙って中に入る。
これが長年親しんできた私の環境だ。しかしドイツではそうではない。
お客がお店の人に声をかけ、自分がお客であることを、店員にアッピールする。店員はそれに応えるようになっている。
だから、朝ホテルの食堂に入ってくるドイツ人はすべて、ホテル従業員に対して挨拶をして、
これから食べるからサービスお願いねと言っているわけである。
別に先に朝食をとっている、見知らぬ東洋人に挨拶しているわけではないのである。
だから大きな声で、『モァゲン』と言って入ってくる。
またパン屋でいくら並んで自分の順番を待っていても、こちらから、『ハロー』と言わない限り、
決めかねていると思って店員も寄ってこないのである。
どこに行っても、お客が店員に声をかけ、用が終わればお客が挨拶をして帰るのである。
『ハロー』と『チュ~ス』は最も使うドイツ語かもしれない。


ところが私の行くところは一般大衆が行く庶民のお店ばかりなのですが、でもそうでないところもあるらしい。
で聞いたところによると、高級店は店員がすぐ張り付いてくるらしい。
そういえば2年前の春、一人ドイツに取り残され、日本領事館に用事があり、
デュセルドルフであまった時間をつぶさなければいけないことがあった。
私はドイツ語ができないのでドイツ在住のAJDT会員の女の先生とともにデュセルドルフの町を散策した。
この街は大きな町で日本人が多く住んでいるところで有名だ。有名ブランドの店が立ち並んでおり、
その中の一軒に入ったことがある。
そこは飾ってある衣類とか雑貨を手に取ってみていると、隣に来て、触った衣類を片っ端からすぐにたたみなおすし、
雑貨も元あったところへディスプレイし直す感じの悪い店員がいた。
高級品は『見るだけ』と言ったら、本当に見るだけで手を触れたらだめらしく、
ブランド店の店員はすぐ寄ってくるらしいので注意が必要。


ドイツで買い物をするとすぐ、小銭がたまる。小銭だらけになってしまうのである。
ドイツの店員は引き算が得意ではないらしい。
たとえば、8ユーロ25セントの買い物をすると日本人なら10ユーロ札1枚とあとは硬貨で25セントを寄せ集めて、
2ユーロお釣りを貰おうとすることは、よくある普通のことである。
でもドイツおそらく欧米では、まず25セントの小銭をそのまま多いと言って、
返してから、お釣りの1ユーロ75セントを返してくる。
小銭を整理して2ユーロ硬貨1枚のお釣りを貰えれば財布もずいぶん軽くなるのに、
それができないので、小銭がたまってどうしようもなくなる。コーヒなどを飲む時はいくらと言っているのか、
ドイツ語で全く分からないので、感で5ユーロ札とか10ユーロ札を出してお釣りを貰うことが多いので、
帰る頃には小銭を山ほど持つことになる。最後は助川友朗氏が、みんなの小銭を集めて、買い物をするとき、
両手に小銭を山盛りにして差し出すと、お店の人が必要な分だけ取っていってくれる。
これを何度か繰り返して小銭を減らしている。でも最近気づいたことだけど、コインの表はEU圏内で統一されているけど、
裏は国ごとにデザインが違っていろいろな国の硬貨がEU圏内を回っているので、EU加盟国の硬貨を集めるというのも、
収集が趣味の人には面白いかも、でもドイツにいるだけでは、なかなか集まらない。
特にドイツから遠いい国、ギリシャとかポルトガル、スペイン、フィンランドの硬貨はなかなか手に入れられない。
最後にドイツ人の名誉のために言っておきますが、ドイツ人は別に引き算が苦手ではないようだ。


私は結構汗をかく、ドイツでダンスのレッスンを受けていると、
ヒップホップやディスコフォックス、サルサ、ラインダンス、パーティーダンスなど激しいダンスではかなりの汗をかいてしまう。
そこで必要なのがハンカチーフである。お気に入りのハンカチは必ずズボンのポケットに入れておいて、
上品にかっこつけて汗をぬぐうのである。でも目があったドイツ人は皆変な顔をする。
私は友朗さんとは違って、誰かまわなく話しかけて行って皆とは友達になれない。
きっと僕はフレンドリーな人間ではなく、気難しく見えるので、そんな目で僕を見ているのかな。
きっと僕は嫌われているのだ、と被害妄想になる。

ドイツの男性用トイレの小便器は高くて小さい。小さいから的を外さないように、便器のそばで用をたすことになる。
中には小さな虫がいて、そこを目がけて用をたす。的が小さくなるとそばによって小さな的をねらうようになる、
そうすると飛び散らさなくなるから不思議である。
ハンカチを用意して手を洗ってハンカチで手をふいているとドイツ人はまたもや変な顔をする。
ドイツでは用を足すと手を洗う所には必ず手をふく使い捨ての紙が置いてある。
ドイツ人はハンカチを使わないのである。ドイツ人はハンカチを持っていないのかもしれない。

いやドイツ人は必ずハンカチを持っている。欧米人は皆同じ目的のためにハンカチを持っているのである。
それは鼻をかむためにだけに使うのだ。それ以外は使わない。鼻をかんだ後のハンカチで汗を拭かないし、
トイレで手を洗った後でそのハンカチでは手をふけないのだ。日本では鼻をかむのは紙で行い、手をふくのはハンカチでする。
ドイツは鼻をかむのはハンカチで、手をふくのは紙でするのだ。だから僕のことをずいぶん不潔なことをする奴だと見ていたのだ。
それを知った後、私は、レッスンにはタオルを持っていくことにした。


大きな町では市内を走るSバーンとか地下鉄Uバーンが通っている。
そしてドイツにも電車に乗る時は、自動券売機と自動改札機がある。自動券売機はやたら難しくて、
いつもドイツ人の日本担当の女の先生に買ってもらっている。
その先生によると、まず目的地を確定して、次にどんな乗車券が欲しいかを選ぶ。どんな乗車券というのは、
片道、往復、団体(4人ぐらいからあって、割引になるらしい)一日乗車券に1週間乗車券、回数券などがあるらしい。
そうすると自販機に値段が出てお金を入れると、乗車券が出てくる。
ドイツの駅では改札が無いので、自動改札機は、駅構内にとかホームの手前においてある。
その濃いグレーの箱に切符を入れてしるしをつける。それをしないと私服の検札官どこからともなく現れて、
捕まるとその罰金は途方もなく高いらしいとのこと。改札が無いので、乗車券を回収するところもない。
ドイツ人は法律で決まったことは、必ず守る国民だから、改札が無くても、みんな切符を買うということだ。

パーティや食事会が終わってホテルに帰ると、ほとんど深夜になっている。
何気なくテレビをかけると、何やらHな宣伝をしていることが多いい。
H系のお店の宣伝で、電話番号をことさら連呼する宣伝である。
よく聞いてみると数字を一つずつ上から読んでいくときと、二桁ずつ読むときがある。
日本では電話番号の数字は一文字ずつ読んでいく、キレのいい数字は時々何千番とかいうときがあるが、二桁ずつは読まない。
しかもドイツ語の二桁の数字は解りづらい。そして私にとって口の動きがついて行けない程言いにくい。
まだ英語のほうがはるかに言いやすいし、聞き取りやすい。でもドイツでは二桁数字はあたりまえで、
21なら1と20と言わなければならない。日本語の数字では4と7は二つの言い方がある。
ドイツでも同じように2を言う時に二つに言い方を使う理由は同じで似ているものがあるので、混乱しないようにだ。


今年のインタコではミュージカルを見に行った。内容がよくわからないので面白さはたぶん半減していたと思う。
ドイツで劇場とか映画館に入ると、席が中ほどの人が、後から入ってくると、日本ではほとんどの人が、
座っている人が足をすぼめて、通る人は正面を見て、すでに着席している人似お尻を向けて横向き似歩いて行く。
でもドイツは、着席している人は椅子を戻して、立ち上がる。そして通る人は、通してくれた人のほうを向いて、
一人ひとりにアリガトウを言って自分の席に着くのである。ドイツと日本では反対を向いて着席をするのが習わしのようだ。

ドイツ語は関西弁に近いかもしれない。去年のインタコでオーストリアのダンス教師達とディナーパーティをした。
食事は本物の日本料理でとてもおいしかった。最後に記念撮影になったとき、日本ではチーズという時に、
オーストリーの会長は我々に敬意を表して、寿司という言葉で写真撮影をした。このときの発音が関西弁だった。
東京ではスシは短く発音するのだが、スゥシィと関西なまりで発音していたのが気になったのは私だけだっただろうか。
 日本人とドイツ人の共通の言葉もある。ドイツ人も始めて聞いた話は、
 あっそう!と言うし、驚いた時には、なぬ!て言うからおもしろい。
そして私のネームプレイトも今年はドイツ風にJassとなった。


2009年