宮木康隆のエッセイ集

tomo essay

08 オーディション


自信がないような顔付きで、かなり太り気味の中年のおじさんが、
「トゥーランドット」の「誰も寝てはならぬ」を
歌ったTV番組はYou Tubeを通して世界中に配信され多くの人が感銘した。

2007年、英国のオーディション番組『ブリテンズ ゴット タレント』で
携帯電話ショップ販売員であった ポール・ポッツ が優勝した。

容姿のさえない中年のおばさんが、「レ ミゼラブル」の「夢破れて“I Dreamed A Dream”」を
歌ったTV番組は動画配信サイトに転載されると、なんと9日間で一億回を超えるアクセスが世界中からあったそうだ。

2009年、英国のオーディション番組 『ブリテンズ ゴット タレント』第3シーズンに出場したスーザン・ボイルは48歳、
ポール・ポッツより9歳も年上である。3人の審査員が驚いた顔をして全員が「イエス」を出した光景はまだ目に新しい。
残念ながら彼女は優勝できなかったが、優勝したダンスチームよりはるかに有名になった。

2009年12月31日、民放ではポール・ポッツが出演し、紅白歌合戦では、スーザン・ボイルが出演した。
さらに紅白でSMAPがマイケルのダンスを披露した。


ほんとうに2009年はマイケル・ジャクソンの薬物過剰投与のため死亡したことが悔やまれる。
映画『This is it』を封切りの次の日に見に行った。封切り日は水曜日、
水曜日はレディース デイなので次の日に行った私は、いつでも1000円のアフカンである。
マイケルのかっこよさに感激していると、年末はTV番組でマイケル特集が組まれていて、
相当な数のマイケルの映画とビデオクリップを見ることができた。
あの短い丈のパンツ、金色のフェンシング衣装の褌(ふんどし)姿、
日本ではお笑い系の芸人が着るような衣装でも、ものすごくかっこ良く見えてしまう、
彼のダンスと歌は本当にキング・オブ・POPSなのだ。さて、私がこんなにTVでマイケルを堪能できたのは実は、
去年2009年にテレビが壊れて、新しいテレビを購入した。もちろん地上デジタル対応の薄型テレビである。
購入とほぼ同時に有線放送に加入した。この有線放送なかなか面白い、わたしの見たい番組がそこそこある。
その中のひとつ『FOXテレビ』の時間があればある番組を時々見ている。
でも今年は、MTVチャンネル等でマイケルのビデオクリップがたくさん放映され、
ムービープラスチャンネルでは「ムーンウオーカー」などの映画が何回も放映された。


その中で時間があれば『FOXテレビ』で見ている番組がある。
私は有線テレビの番組だが当然スカパーでも見ることができる。
その番組は原題を“So you think you can dance”という、
勝ち抜きダンス・コンテスト形式でアメリカ本土からダンススターを発掘する番組である。
FOXTVが、歌のコンテスト番組『アメリカン・アイドル』の成功で
そのダンス版で二匹目のドジョウを狙った『アメリカン・ダンス・アイドル』だ。
応募者は地方予選を勝ち抜いて、アメリカのNo.1ダンサーになるため為に激しい12週間の競争を闘う。
審査方法は会場の審査員と視聴者の投票によって選ばれ、優勝者は$100,000の優勝賞金等をもらえる。


2005年から始まったこのダンス・コンテスト番組は2009年でシーズン5になる。
今日本で放映されているのは2008年度のシーズン4である。
ただこの番組を見ているだけでは、どのように勝ち残っていくかがいまいちよくわからない。
簡単に説明するとこうだ。
まず全米の各地で予選オーディションを行い、その中から選ばれた上位50組がロスアンゼルスの本線会場へと進む。
それからさらに男女8人ずつ上位16名を選抜し、その後、毎回くじ引きでカップルとダンスのジャンルを決め、
生舞台で披露したのち、まず審査員(3名)がその回の出来の悪いカップルを何組か選ぶ。
出来の悪いカップルは自分の得意部門のソロダンスを踊り、視聴者はそれを見て電話投票し、
翌週、投票で最下位だった男性1名、女性1名が追放される。ダンス自体はカップルで踊っているが、
投票は個人に行われ必ずしもカップルで追放されるわけではない。
あらゆるダンスの自信があるものが大挙してオーディション会場に押しかけるが、
基本的にカップルダンスなので相当ダンスの基礎ができていないと対応できない。
カップルダンスなので、ダンスだけうまくても男性は女性をリフトする力がないと話にならない。
この番組を見ていると、世の中にはカップルで踊るダンスは相当あり、私の知らないダンスがけっこう出てきたりする。
この決勝に進んだカップルはダンスの基礎はみなしっかりしていて、
クラシックバレーの基礎はみんなできるようだ。ジャンプもすごいし足も上がる。


さて番組は参加者が絞られてから、振付師による振付を覚えさせられ、それをどのぐらいうまくこなせるかを見る段階に入る。
これまでは自己流でもうまいいと思われていたものが、多少種類の違うダンスをさせられると、まったく踊れなくなる。
特にこの傾向はほとんど自分一人で踊っている、ヒップ・ホップやブレイク系のストリートダンサーに顕著にあらわれ、
この段階でいなくなる。ここで50名に絞られる。
ここからハリウッドに舞台を移し専門の振付師がボールルーム・ダンス、ヒップ・ホップ、ラテン・ダンスを
徹底的に叩き込こまれ男女10人ずつに絞られる。
10組になってからは、会場にお客を入れ公開コンテストになり、毎週男女1名ずつが消えてゆくことになる。
その10組は、くじ引きでダンスが決まると、専属のそのダンス専門の振付師がつき、
どのぐらいその振り付けがこなせるかを見る。この番組で感じるのは、ボールルーム・ダンスの下手さ加減である。
1曲ずーと組んだままではないのだけれど、ラテン系のルンバ、チャチャ、パソ・ドブレ、サンバ、サルサ、
ジャイブ、ロックンロールはまだ何とかこなしているが、ワルツ、タンゴ、クイックステップを
選んでしまったカップルはまず、出来の悪いカップルに入ることが多い。

どうもカップルダンスは相手がいるため、ソロで踊るダンスとは違ったテクニックを学ばなければ、踊れないようだ。
3カ月もカップルダンスのレッスンを受けているのに、特にボールルーム・ダンスは滑らかに動けない。
2人で踊るダンスは相手がいるためほかのダンスと違って、
あきらかに滑らかに動かなければならないダンスだということがはっきり見て取れる。
社交ダンスは、競技ダンスほど技術はいらないし、大きく踊る必要もないが、ただ1つ相手に対して、
滑らかに動かなければいけないということは、必要最低条件なのだと思う。
すなわち社交ダンスは、音楽とリード&フォローのダンスだということです。
彼らのソロダンスは、本当にうまいし見せる力もあるのが、
カップルになっても各々が勝手に踊っているようにしか見えなく、
リードとフォローが欠如したダンスでカップルが一体化していないので、私には非常にぎこちなく見える。
振付を各々がこなし勝手に踊っているダンスで、カップルダンスの良さが全く見えてこないのである。
ふと、われわれの業界を見ると、なんと同じことをしているではないか、ルーテンを知っている人のほうが上手で、
地方のダンスパーティに行くとルーテンがわからないので踊れない人となってしまう経験は幹部はみんな持っている。
ルーテンを教えるのは、ルーテンを覚えさせることではなく、ルーテンを使って、
リード&フォロー等カップルダンスに必要な要素を教えるために利用するだけである。
リード力がないステップは相手に通じないため教え魔を作りだし、
リードされないからフォローをせずに勝手に踊るのである。
カップルダンスの特徴を理解せずに、教えている指導者がいる限り、格好だけのダンスを教えてしまうことになる。
というよりもはや我々の生命線であるリード&フォローを教えられなくなっているのである。
競技ダンス選手のホールドとかステップを教えていては、社交ダンスそのものが教えられないのである。


 去年から始めたAJDT/IDCの教師試験は、教え方のオーディションに近いかもしれない。
カップルダンスの基礎は勿論、カップルダンスの教え方を勉強したものでないと、合格点は出せない。
カップルダンスの教え方を理解できれば、どんなカップルダンスが出題されようとも、対応できるはずである。
教師試験を受ける人はもちろん、AJDTの会員はダンスの教え方の基本をぜひ学んでもらいたい。


2010年