助川友朗のエッセイ集

tomo essay

13 普通の世界



ダンスを踊ること、踊らせることが普通になる年が明けました。 日本では、永らくダンスを踊ること、踊らせることは普通ではありませんでした。

また、ここで云うダンスとは、何かということも明確ではありませんでした。 いわく、一人で踊るもの、カップルで踊るもの、みんなで踊るもの。法的には全てが含まれていますが、行政の都合上、男女が踊るものを枠をかけて規制が行われていました。


場所の規制、年齢の規制、営業時間の規制、飲食の規制、ありとあらゆる規制をかけて、ダンスを踊る、踊らせることは反社会的な行為であるかのごとく取り扱われてきました。 もう20年以上前に、ダンス規制の撤廃を目標に、ダンス議連を作りダンス界揚げて戦ったことがあります。


元全日本プロのチャンピオン 篠田学 先生を中心に私もかなりお手伝いさせていただきました。 残念ながら、我々の戦いは、今一歩のところで警察官僚のウソに押し切られました。ダンス教室が一定の枠で風俗営業から適用除外にするというやつです。 一見ダンス教室が風俗営業の適用除外になるからよかったように思えますが、これはとんでもないことです。


教えている行為と、踊って楽しんでいる行為を、傍から見て、判断できるでしょうか? 踊るという行為はソフトなのです。それをハードで区別できるでしょか? それに、二人が楽しんで踊る行為は悪いことで、教えている行為は正しいなんて、おかしくないですか?こんな法律が出来たら、ダンス文化は死滅すると思いました。


現在のダンス愛好家が持っている、何となしの風潮は自然に生まれたものではありません。公民館でのダンス活動は、決して男女が楽しんで踊っているのではない、競技目指して、清く正しく汗をかき、スポーツとして行っている。こんな風潮はもともとあったのですが、法律の改正によってますます強まったと思っています。


そのくせ、ダンスの時しか着られない、許されない派手な衣装の流行も抑圧された規制の中から生まれたと思っています。 普通のお洒落で、普通の衣装で、普通に踊ることが無くなってきてしまいました。 我々のダンスがマイナーへ転落し、世間から遊離した特別の社会になった一因だと考えています。


それが今回、風俗営業法の改正によって、普通の世界の中へダンスが入ることになるのです。 今回の改正に大きな影響を与えたのは、我々のダンス界から沸き上がった声ではなく、摘発されたクラブの顧客さんの若い一般人でした。

彼らは「レッダンスの会」という組織を立ち上げ、何十万という署名を集め、普通に踊りたい、踊る行為を認めさせたいと、大阪で声を上げ、法廷闘争でも、全面的にクラブ側に立って応援しました。 再び、ダンス議連が立ち上がり、最後の詰めの部分では、公益法人日本ダンススポーツ連盟(特に山田専務を中心としたメンバー)が大きな役割を果たしました。

山田専務は、20年以上前に我々が戦った時のメンバーです。あの時、この中途半端な結末は許しがたいと涙を共に流した一人です。 本家本元の我々ダンス界は、一部が反対に回り、この改正を邪魔しました。ダンス教室だけが適用除外になっている既得権益を維持したかったからです。 ダンス界、ダンスのことを考えれば、ダンスが普通になることは誰でも賛成すると思います。


しかしながら、一部のプロ団体は既得権着を守るために、自分たちの利益のみのために、ダンス界の発展を阻害しようとしました。国賊ならぬダンス賊なのです。 ともあれ、日本ダンススポーツ連盟の活躍で、ほぼ全面的に我々の主張が認められた内容を勝ち取りました。


山田専務の粘りは驚嘆に値します。銅像を作ってあげるべきだと思いますが、無理がたたり、現在休養中です。彼が復帰して、20年ぐらいたって引退したらみんなで考えましょう。 これからは、我々ダンス界を取りまく状況は大きく変化していくと思います。


一部のクラブではもうすでに大きな変化が起ころうとしています。禁止されているダンスを踊らせるだけで、お客さんは来ました。風俗営業の摘発だけ気を付けていればよかったのです。しかし、これからは何処でも踊れることとなると、サービスの点で優劣が付きます。 より充実したバーとしての店作り、満足いただける飲食が必要になるということです。

我々のダンス教授の世界も大きく変化するでしょう。お客様が求めているもの、満足してもらえる内容で選別が行われことになるでしょう。 20代にも70代にも同じ内容で教えて、お客様が習いたいダンスではなく、教師が教えたいダンスを教授していたのでは、客離れは当然です。


ルーテン、足型を、教え、ホールドを直し、形を教えている内容では淘汰されるでしょう。 日本ダンススポーツ連盟の方々もその辺を肌で感じ我々と業務協定を結びました。

いまこそ、我々が研究し培ってきたAJのノウハウで日本に社交ダンスを復活させましよう。